
ハウスメーカーの展示場では、あこがれの暮らしを再現した実物を見る事ができ、相談すれば、すぐに敷地にあてはまる間取りを営業マンが持参するでしょう。また身近な工務店に相談すれば、簡単な図面ですぐに工事の段取りを始めてくれることでしょう。
ではなぜ、建築家や住宅を専門とする設計事務所が存在するのでしょうか。
それは..敷地形状や条件が厳しく、建築家でないと対応できないケースもありますが、それ以上に、家族のライフスタイルにぴったりあてはまる、納得の住まいを望まれるケースが増えているからなのです。
既製品の服が多くの人達にそこそこなじむように、メーカーや工務店の住宅、建売住宅などで満足できる人もいることでしょう。しかし、家づくりに少しでもこだわりを持つ人が、メーカーや工務店の建てる住宅に満足できないことも、昔と違ってかなり増えてきているのは事実です。最近は要望や条件が多岐にわたる上、法規制や検査制度も複雑になってきているので、簡単な設計で満足できることのほうが少なくなってきているのではないでしょうか。また住宅の場合、簡単に買い替えもできず、場合によっては一生そこに住み続けなければならないわけですから、極力失敗のないようにしたいものです。
今の日本では、面積や間取り、室内外の仕上げ、設備機器などのグレードなど「わかりやすい差」が建物のレベルを決めると考えられている風潮がありますが、実際には、空間の広がりや、光や風のはいりかた、素材の質感や色彩など「わかりにくい差」が住み心地に大きく影響を及ぼしていることも多いのです。
個人や家族のライフスタイルが多様化してきた現代の住宅では、敷地や予算などの諸条件や、建主の希望をしっかりと理解し、よく話し合いながら、バランスよく計画をまとめ、サポートのできる「建築家」のようなプロが、とても重要な役割を担っていると思われます。
ハウスメーカーや工務店が、数枚から十枚前後の図面で家を建ててしまうのに対して、設計事務所の場合は、50~100枚と、圧倒的に図面枚数が多いのが一般的です。これはどういうことかというと、ひとつは前者が、一定のルールに基づいた間取りで、大量生産の限られた既製品を使用することで、合理化を行い、図面枚数を減らしているという側面もありますが、建主との打ち合わせに本来必要となる、説明用の図面や資料、スケッチなどが、大幅に不足していること、そして何より、限られたメニューの中から選ばせることで、合理化をはかっているというところに、最も大きな違いがあるわけです。
設計事務所によって若干差はあると思いますが、建主とともに、さまざまな図面や模型、スケッチなどを参考に、内容を確認しながら計画を進めます。これによって建主が、計画している住宅のすみずみまで理解が深まり、完成後にも「こんなはずじゃなかった」という後悔の念をいだくことを大幅に減らすことができるわけです。
つまり人任せでなく、建主自身がじっくりと考えることによって、はじめて納得の住まいづくりが実現できるのです。建築家は、十分な説明と、適切なアドバイスをすることで、よりよい方向に導く役目をになっているわけです。
また建築家(設計事務所)は通常施工を請負いません。ですので、ハウスメーカーや工務店のように自ら工事を行う場合と違い、利害関係がないため、工事に関わる問題点など、建主の代理として、第三者的な立場から、プロの目で細かくチェックや検査を行い、問題があれば是正を指示します。設計と施工が同じ会社内で完結するクローズドスタイルではなく、完全にオープンで安心なシステムがそこに存在します。また施工を行わないため、家づくりに関わる全てのことについて、ざっくばらんに相談ができるというメリットもあります。
工事をお願いする工務店は、対応がよく、技術のあるところであれば、どこに依頼することも可能です。建主の知っている工務店でも構いませんし、設計事務所のよく知っている工務店でも構いません。
また特命の場合もありますが、2~3社の合見積を行うことで、より正確で条件のよい工事コストを導きだしたり、我々の査定によって、間違いや異常に高い項目などをチェックして是正させることも可能です。それらをふまえると、工事費においても、設計料を出して設計事務所に依頼する事に大きなメリットがあるわけです。
ただし建築家や設計事務所もいろいろあります。自分のデザインや考えをおしつけがちな自己主張の強い人もいます。また通常、ビルやマンションなど大きな建築を専門とする事務所やRC造、鉄骨造、木造、と得意とする構造の違いなどもあります。
まずその事務所がどのような建築を普段手がけているかを確認した上で、相性や考え方、センスや価値観が近く、ともに考え、より良い家をつくろう!という考えをもつ建築家(設計事務所)をじっくり探し出すことが、まず大切なスタートとなるわけです。
高い買物ですから、じっくりと時間をかけて依頼先を検討することが大切です。依頼先を間違えてしまうと、その後の全てのことが間違った方向に進んでしまい、なかなか後戻りできず、お互いに不幸な結果を招いてしまう可能性も高くなります。建築家探しの段階で手間と時間を惜しまないことです。
敷地や予算などの悪条件を納得した形でクリアしたい、ハウスメーカーのモデルハウスや工務店の建てる家を見ても、どうもしっくり来ない。なんとなく曖昧ではあるけども、自分たちらしい家を後悔のないようじっくりと考えて建てたい、あるいは施工がきっちりとされているか第三者としてのプロの目でしっかりチェックして欲しい。このように考えていらしゃる方であれば、是非建築家への依頼をおすすめいたします。
家づくりは皆さん初めての方がほとんどです。消極的にならず、まずは飛び込んでみてはいかがでしょうか? 通常は相談までなら、費用はかからないはずです。我々は勿論ですが、一般的に建築家(設計事務所)は皆、相談しに来てもらうことを待っているはずです。